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M-netで2月から放映→★
(私は見られませんけど)
そこで、いまさらですけれど、やたら長くなって完結しなくなった「Dr.チャンプ」の感想をあらためて。
プロットは→BUNKAKOREA Innolife
韓国の国家代表選手合宿村であるテルン(泰陵)選手村の医務室を舞台に、人生の苦さを知っている大人たちが織り成すヒューマンストーリー。
プロットを読んだとき、最初は期待できないかも・・・と思ったこのドラマ。
見始めたらストーリーのテンポよさと、映像の美しさ、俳優たちのいきいきした演技が瑞々しく映って・・・。
そして脚本も演出も、大げさな描き方をせず、ただ淡々と経過だけを追う穏やかな視点が気に入って、ひさびさ真剣に見ちゃいました。
韓国のドラマを、リアルタイムで全部見たのは初めてのこと。
もちろん幼い語学力では理解しきれないところも随分ありましたが、懸命に聞き取りを繰り返してついていきました。
こんなに私が熱中した作品だけど、2010年のドラマのなかでは、目立つことも話題になることもなく、ごくごく地味に静かに始まって終わりました。
見るからにカッコイイハンサムはいないし、日本でもあんまり話題にならなそうなドラマです笑。
ところで、最初プロットで期待できないと感じた理由は・・・。
スポーツ、メディカル、ヒューマン、ついでに恋も混ざったら、ただごった煮にしただけになるんじゃないか、主人公たちの背景が色々あり過ぎないか・・・と懸念したのと、オム・テウンの役が、別名「ドクター・ハウス」なんていっちゃって、タイトルが「ドクター・チャンプ」で・・・。杖をついて歩く皮肉屋の医師という設定は実際、「Dr.ハウス」に似すぎて、正直良い方向に転ばないと思ったから。
同じような懸念している記事もいくつか読みました。
結局は設定を置いたまま恋の話に終始しないか心配されたりも。
結果的に、恋のストーリーは多かったかもしれません。正直、少し無駄に見えるシーンもあった。
ただ、その恋にとっても共感する部分が多かった。わかるわかる・・・という痛い場所があちこち笑。
そうはいってもドラマティックにせず、恋愛感情を主題にしなかったのがよかった。愛は人にとっては大きな慰労になる・・・そんな部分が描けていたと思います。
懸念の2、イ・ドウクが「ドクター・ハウス」でヒュー・ローリー扮するハウスに設定が似ているということに対しては、放映前には「それはオム・テウンの演技次第だ」という記事がありました。
確かに杖をつき、後遺症の痛みを抱え、皮肉めいたことばかり吐くという共通点はあったけど、このイ・ドウクというキャラクターの根本や役割はハウスとはだいぶ違うと思いました。Dr.ハウスをそれほど見たわけじゃないから、全体的な比較はできないけれど。
ドラマ終了後の記事には「ドクター・ハウス」の話題を見ることがなかったし、「オム・リスマ」(オム・テウンのカリスマ)なんていう人までいたとか何とか書いてあるものもあった笑。
ハウスだなんだという声を意識したみたいなシーンまでありました。
1話だったか、鎮痛剤依存のハウスのように、長旅で足がいたいといった後に、ボトルから錠剤を服用して、迎えの本部長が「鎮痛剤を飲むほど痛いのか?」と驚くと、「ビタミン剤ですよ」と無愛想に言うシーン。ひそかに笑ってみてました。
ちなみにこれは余談ですが、ドクター・ハウスの真似じゃないかといわれたイ・ドウクのキャラクターには、実在のモデルがあったそうです。
私が読んだのはこの記事ですが、ジョンズ・ホプキンス大のイ・スンボク医師がその人。
体操の全米チャンピオンで、五輪のメダリスト候補だった82年に首を骨折して四肢麻痺となってしまったそうです。しかし悲劇にもかかわらず、リハビリと並行して医師の道を進み、現在車椅子に乗ってジョンズホプキンスでリハビリ医学を専門として、勤務されているそうです。
日本でも本が訳されているので、ご存知の方もいるかもしれません。
イ・スンボク医師は「かつて私を絶望と悲しみに追い込んだ障害が、今は多くの人に夢と希望を与えている。私の障害はこれ以上の欠点がない」と語ったそうですが、劇中のイ・ドウクはそのようなひとになっていった気がする。
いずれにせよ心配点はおおよそ1週目で解消され、むしろ韓国のドラマには珍しい雰囲気に興味が強くなったのです。
韓国のドラマは外面をきれいに設計されることより、人の内面を描ききることを重要視するものが多い気がします。それゆえちょっと強引さや粗さも見られますが、大きな長所でもあります。
しかし既存の韓国ドラマと違って、パク・ヒョンギ監督自身がこのドラマではあからさまな葛藤を描く気がなかったというように、同時に大きすぎるカタルシスも存在しません。
登場人物がどういう結論に達するのか、どういう結果を出すのかを中心とするのではなく、人と人との思い合いであったり、ゆっくり乗り越えていく様であったり、織り糸のような出来事を、一つ一つ丁寧に照らし当ててあげるだけです。
傷を抱えた主人公たちをふんわりと毛布で包んであげるような、やさしい演出。俳優もすごくその意図を理解して演じているように感じました。自然で、ドラマらしくない力の抜けた演技。
だからか、これまで印象が強くなかった俳優さんたちも、今までのドラマよりもずっと生き生きして見えました。上手く良いところが引き出されたのかな、と思います。
俳優陣の熱演にもかかわらず、放映時間が月火の8時50分ごろという早い時間帯、起伏の少ない穏やかなストーリーだったこともあってか、視聴率は伸び悩み、話題になることもなく終わっっていったけれど、どういうわけか終了後に上がった記事で、このドラマが本当に良心的だった、さわやかだった、そして韓国ドラマの新しい局面をひらいたという言葉が咲きました。
ずっと共感をもってドラマを見ていた私にとっては、妙に誇らしい出来事でした。
明らかな葛藤がないといっても・・・途中で辛い事故も起き、心の混乱する問題も起きる。
でもそのすべては、ただ選手村の毎日で起こる出来事で、事故で・・・世界のどこかで起こる出来事の、数え切れないひとつのこと。そんなふうに、いつも一歩引いた場所からながめているような描き方。
汗臭く、女々しさがあって、つまらない意地もはり、卑屈になったり・・・。そんな弱弱しい姿にじれったくなりながら見守るしかない。
でもそのいずれのシーンも、柔らかな暖かさがあって・・・。
一人で泣かせるとしても、優しげな光を当てたりして、陰惨に見せない工夫に満ちてました。
「スポーツ」や「メディカル」のハード面を期待される方には向かない作品。
大きな葛藤と大きなカタルシスを求める人にも向かないドラマです。
美女と美男が美しい恋するストーリーを好む人にも合いません。
ヒロイックなスポーツ選手たちも、最高の技術で奇跡的に患者を救う医師も、栄光に満ちた心地よい世界もなくて、ただ私たちと同じように、小さい世界の中で挌闘し悩み苦しむ平凡な姿の主人公たち。だけど誰も人生から逃げず、何度も挫けながらよろよろ立ち上がって、ちいさな成長をしてみせる、そんな姿だけ描いた、「慰労のドラマ」・・・それが一番似合う言葉だと思いました。
ドラマ自体がこの主人公たちにそっくりだった気がします。
最終回は、余計なものを省いて、すばらしいまとめ上げだったこともステキでした。
ある意味で予想しない形。たぶん今まで見てきたどのドラマより、気持ちよく受け止められました。
この作家さん(ノ・ジソル作家)&監督、また一緒に作って欲しいです。
また映像美も大きな特徴。
韓国の地上波では初めてとなる試みで、ドラマ全シーンをキャノンのDSLRカメラ5D Mark2で撮影。もともとは写真撮影用で、独特の浅いフォーカスの撮影が可能になり、背景はもちろん、フォーカスのあたる人物以外の登場人物もふんわりとぼやけるので、奥行きがあり映画のような印象が出ております。色合いも強い発色をさせず、程よくトーンを抑えて柔らかい印象に整えていますので、よりドキュメンタリーチックに感じられます。
もし、あえて残念な点をいえば、PPL(間接広告)が露骨だったことかしら。
最近日本も「へ?」というのが増えてますけど。
ことにSBSはもともとPPLが多いし・・・。
だけど、予算が大きいドラマという感じでもなかったし、実際PPL否定しすぎるのも難しいなあと思いました。本編はCFナシで放映するんだから。
どんどん長くなっちゃうけど・・・。
ドラマの印象に残ったシーンを紹介。
放送を楽しみに待っている人はご覧にならないように!