ご紹介いただいて、東京の韓国文化院・ハンマダンホールで行われた、韓流発展協議会主催セミナーに参加してきました。8/30のことです。
タイトルは「今の韓国食ブームを語る」。
1部がコリアン・フード・コラムニストの八田靖史さんによる「日本での韓国食の歴史と現在」、2部が6名によるパネルディスカッションとなっていました。
会場内の写真は撮影不可でしたので、代わりにこれを。
セミナーだけで十分勉強になりましたが、お土産が「どん」と大きかった。
この日はお休みでしたが打ち合わせなども入れていたので、あちこち歩き回ってた私にはどっしり重くて、帰りにはタクシーに乗っちゃった…。
この投稿、ほとんど個人的メモなうえ長くなりますが、まずセミナーのこと。
1部のスピーカーである八田靖史さんは、ブログ「
韓食日記」をご覧になっている方も多いでしょうが、「コリアン・フード・コラムニスト」という独自の専門分野を切り開いてきた方で、90年代末にソウルへ留学し、帰国後に韓国の食文化をテーマにしてHPやメルマガでの情報発信をする傍ら、韓国語学習書も多数発行されてきました。
八田さんの留学時代はまさにIMF危機のころですね。
今回のテーマ「日本での韓国食の歴史と現在」は40分ほどの時間でしたが、新大久保が歌舞伎町で働いていた方々のベッドタウンとなり、そこからふるさとの味を食べさせようと家庭料理の店(ムキョドン・ハレルヤなど)が生まれ、94年に日暮里から韓国広場(ジャント)が職安通りに移ってきたことで、現地の材料を手に入れて飲食業を展開するインフラ整備がされ、日韓WC、冬のソナタによる韓流の始まりを経て、「日本にいながら韓国を体験する」コリアンタウンとなっていった経緯を、写真を用いながら紹介して下さいました。非常にコンパクトに振りかえるものでしたが、八田さんらしく明確でよく要点をとらえた説明でした。
そして2部でのパネルディスカッション。
パネリストは
キム・ジンヨン氏 韓国農水産食品流通公社 東京aTセンター支社長
イム・ファビン(任和彬)氏 韓国料理焼肉コラボ代表
オ・ヨンソク氏 株式会社永明代表(「妻家房」の経営)
チョ・ソンオク氏 趙善玉料理研究院 院長
八田靖史氏 コリアン・フード・ジャーナリスト
本田朋美氏 韓国料理研究家
この中で、「韓国料理が一般化していくのにはまだまだ課題がある」という話で、フランス料理や中国料理のように、日本人たちが楽しむものとなるためにどうしたらいいかを各パネリストが意見しました。それぞれメモしたものから、拾い集めてみました。
イム・ファビン代表
・コリアンフードはまだ日本では赤ちゃん。ブームを繰り返し、ポイントが上がったり下がったりを繰り返しながら定着していく時間も必要。
また、これまでの在日コリアンの料理店には、本国にあるようなサイドディッシュの理解が足らず、逆に韓国人の店には日本人の好むモノへの理解が必要。また日本企業が展開する店は、海外で日本人以外の人がやっている寿司屋のような違和感を感じる。3者がコラボする必要がある。
・(下記八田さんの意見に対し)韓国で素晴らしい料理人がいても、日本はビザ発給に非常に厳しい。だから、交流を深めながらインフラ整備を進める必要もある。
八田さん
・最前線に立っているスタッフが料理背景への知識が足りず、必要なことを伝えられていない面がある。また、関心のある人とない人との情報の差が大きい。それは文化説明の足りない部分があるから。小手先ではない、料理を作る人々の「心」を伝える情報をひろめないといけない。
・伝統的な韓国食の再解釈(モダンコリアンというような)、日本的な解釈や工夫、こういったものが出れば出るほど、「韓国料理とは一体何なのか」という本質にぶつかる。その本質論がこれから起こってほしい。
キム・ジンヨン支社長
・自分が単身赴任で日本に来て思ったが、誰でも簡単に作れるレシピを広める努力が必要。料理学校で韓国料理クラスの開講も広めていかねば。
また、少子化や高齢化という両国共通の社会状況に対応した、体に良い食品の開発も大切。
・両国とも自国の食の世界化を考えている。互いに日本人から320万人、韓国から200万以上旅行。食文化交流の展望がある。
チョ・ソンオク先生(先生は「ぜんだま先生と読んでほしい」とおっしゃってました!)
・日本の特徴の味と韓国の特徴の味を、それぞれ尊敬。
たとえば昔から自分がおなかが痛いときに食べた梅エキスを料理に使ってみたことから、さまざまなエキスをつくってみた。玉ねぎエキスなど・・・。それらは体に良い酵素をたっぷり含んでいる。
そういった風に、新しい調味料、新しい宮廷料理、簡単なレシピをもっともっと作って伝えていきたい。
・世界の人が韓国の食を認めるようになってきた。宮廷料理のもつ自然な味を生かして新しい味を生み、健康食としてのアピールをしたい。
オ・ヨンソク代表
・キムチを売って20年(=妻家房は20周年です!)。妻家房がここまで伸びることができたのは、「本物」だったから。最初は全部韓国から持ってきて作っていた。材料が手軽にいろんなところで手に入れられるようになることが大事。
それから少子化に対応するように、少ない量を売る工夫も必要。
・始めたころは、(奥様の柳香姫先生は)自分の国のものを取られてしまうような気持だった。だけど今はあんなにたくさんの本を書いて広めている。きちんと自分の国のものを伝え、材料を供給していく。
本田先生
・ピビンパッみたいな良く知られたものばかりが好まれ、新しいもの(馴染みないもの)がなかなか受け入れられない、その意欲がまだない。家庭でも良く知られたようなものばかりを教えてもらうことを好む。だから新しい味を伝えられないことが大きなジレンマ。
メディアや企業とともに、「コレ」というものを仕掛けていく、業界全体でのプッシュが必要と感じる。
・食品メーカーの開発も必要。「これはちょっと違うんじゃない?」というものも今はあるが、そうではなくてきちんとしたものを出してもらえるように。
備忘録のように書き込んでしまいましたが、それぞれが韓国の固有性を大事にしながらも、新しいものを作り出していかなければという強い意識を抱えていらっしゃって、そしてびっくりするぐらいパワフル。最近の冷や水もたちまちホットにしてくれそうに思えました。
この日、MBCのカメラが来ていましたが、小さい報道でも向こうでされていればいいですね。
私が初めて韓国料理を食べたのはいつだったのかなあと思いだしてみると、子供のころはやはり焼肉屋さんで、お肉そっちのけで「クッパ」や「ビビンパ」や「ナムル」の味に夢中だったことが蘇ってきます。事実、ホント、我が家は「クッパ」がとにかく好きでしたが、あの味が家では作れないし、成長して外食機会が減ると、懐かしむだけで出会うことができなかった味です。
そして大学卒業して就職したころだったか、近所に韓国家庭料理のお店ができて、友達と行ってみたとき。初めてのお店で食べたキムチの味わいやジャガイモのジョンの香ばしさ。そのお店はすぐになくなってしまったけれど…。
あのころ、同じ学科には留学生が韓国からも中国からもいたのに、中国からの学生が学園祭で水餃子を作ってその味を広めていたのに対し、韓国の彼らには、そういう機会がなかった気がする。もしかしたら今では、大学の学園祭でトッポッキを売ったりしているのかなあ。
エンタメの「韓流」という切り口からは近づいて行かなかった私にとって、食文化の広がりのための課題というのは大きな関心事で、文化の交流の大きな一つだと感じております。
その一つの契機になるかはわかりませんが、現在秋の正式出店を前にして、新宿ルミネにあの韓方ティーショップ・オガダ(五嘉茶)が期間限定ショップを出していますし、CJがピビンパッの新しい形を提案しているbibigoを日本に出店する計画も進んでいます。楽しみにしてます!
さて、長々つづけてまいりましたが、締めはおいしいお土産の数々。
箱を開けると。
重いはずだ!すごいいっぱい。
コムタン春雨 142Kcal…
ゴシレ(高矢禮)マッコリ。
懐かしいなあ高矢禮。宮中料理の店はなかなか根付けなかったね、という話も先日したばかりです。
ムルネンミョン。
ピビンネンミョン。
スンドゥブチゲの濃縮調味料。
そしてお菓子類。
良く見かけるお菓子ですね、トッポッキのスナック。
チャッカンヤンパッ「善良な玉ねぎ」とでも?
チャッカンコグマ…「善良なサツマイモ」
ぎっしりぎっしり。ありがたいお土産です。
なお、韓流発展協議会の主催するセミナーは今後も韓国文化院ハンマダンホールで開催予定があります。韓国文化院HPで申し込めますので、関心のある方はぜひアクセスしてみてください。